誠-巡る時、幕末の鐘-

口程にもない男




―――道場




「一本。雷焔」




奏は木刀を次の沖田に渡し、藤堂の横にドカッと胡坐(アグラ)をかいて座った。




「…話にならん。つまらん。弱い」




想像以上の手応えのなさだった。


だが、鬼であり、元老院の一員である奏が相手では、人間ほとんどがつまらん相手になってしまう。


そこは仕方がない。




「まぁまぁ。続けていてくれ」


「はい」




近藤が奏を宥めすかし、審判をしていた山南に試合の続行をさせた。




「まったく。あれで?はっ!!大きな口を聞くからどの程度かと思ってみれば…あの程度とは」


「まぁ、俺達も予想外だけどよ」




試合を見ていた原田が胡坐の上に肘を立て、つまらなさそうに言った。


同じく見ていた永倉、藤堂も頷きあっている。




「だろ?あれじゃあ、響が戻ってくるまでの暇潰しにもならん」




奏が藤堂の横からひょこっと顔を出し、腕組みをして深い溜め息をついた。



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