誠-巡る時、幕末の鐘-
「響?」
原田は何故響がここで話に出てくるのだろうかと頭をひねった。
「あぁ。もうそろそろ帰ってくると思うんだが」
「遅いな」
もうあれから半刻は経っている。
一刻が二時間であるので、長い買い物であると言えよう。
「どっかの茶店にでも入ってんのかな?」
「あの二人だろ?ありえねぇって」
「あの二人ならばすぐ帰ってくるはずだ」
藤堂の言葉に、すぐさま周りから否やの答えが返った。
確かに、真面目な山崎と響では寄り道をくうはずはない。
奏ならば甘味処をはしごして帰るだろうが。
「あぁ〜。それにしても紫苑様のお菓子食べたかったな」
「そんなに美味いのか?」
奏の仕える家、ローゼンクロイツ・天宮、天宮家次兄の紫苑が作る料理は天下一品。
何度もお忍びで人間界に来ては、料理大会なるものに出て、その度に優勝をかっさらってくる。
中でも、菓子作りの腕は筆舌につくしがたい程だ。