誠-巡る時、幕末の鐘-
「沖田さ〜ん。殺さない程度にしてくださいよ〜」
「分かってるよ」
奏の最低限の忠告らしきものに、余裕の顔で答えた。
「総司の奴、上手く攻撃してるな」
「えぇ。さすがってところですかね」
男が猛烈な勢いというかがむしゃらというか、とにかく激しい攻撃を沖田に浴びせている。
しかし、沖田はそれを軽々と避け、たまに急所を外して攻撃している。
「全然当たらないんだけど?」
まさに子供と大人のようだ。
もちろん、年のことではない。
「それにしても沖田さんの前で近藤さんの悪口言ったり、無礼を働くなんて…命知らずな」
それだけは感心できる所だと思う。
なにせ、沖田は……
「子供だって容赦しないのに」
「全くだ」
以前、沖田と一緒に子供達と遊んだ時に、大人げないものを見せられた。
いつもは子供達には優しい沖田がその時ばかりは様子が変わった。
と言っても、普段見せている目が笑っていない顔を見せたに過ぎないが。
子供達にとっては、初めてみる沖田のその一面にさぞや怖かっただろう。