誠-巡る時、幕末の鐘-



「それは奏もだろ」


「そうですね。否定はしません」




そう言われては身も蓋もない。


奏はそう言うにとどめた。


その時、響達の声が外でしているのが聞こえてきた。




「…あ。響、帰ってきた」


「お疲れ様です」




どうやら一緒にお茶を持ってきてくれたらしい。


響と山崎の両手には、お盆に乗せられたお茶が人数分あった。


山崎のお盆の上には、何やら小さな包みも乗っている。


これが響に奏が頼んだものだ。




「沖田さ〜ん。終了ですよ」


「えぇ〜。もう?」




奏が試合の終了を告げると、沖田はやり足りなかったのか、子供のようにごねた。




「せっかく私が一瞬で終わって時間を譲ったんですよ?それに、ね?」


「分かったよ」




奏が小さな包みを手にとり、顔の前に持っていき、ニコッと笑った。


沖田も渋々ではあったが、竹刀を収めた。



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