誠-巡る時、幕末の鐘-
「お、おい。山崎。何を入れたんだ?」
土方は包みの中の匂いを嗅いでみた。
何の匂いもない。
粉末状の白い粉だ。
「腹痛を起こす薬です。こんなにはならないはずなんですが」
「そんなものがあるのか?」
土方は包みを危うく落としそうになった。
薬とは体を治すもので、体を悪くするものではない。
少なくとも、売ってあるはずはない。
「正確には調合して出来た薬ですが」
「そ、そうか」
(調合って…山崎。おめぇも奏に…)
土方の頭痛の種がまた一つ増えた瞬間だった。
「ねぇ、痛い?どこら辺が痛い?ねぇ、教えてよ」
「や、やめてくれ!!頼む!!」
奏はまだやっていた。
男はもう丸まっている。
「何を?」
『奏…』
全く分からないから教えて、みたいな顔をして笑う奏。
全員に溜め息の嵐が吹き荒れた。