誠-巡る時、幕末の鐘-



「いいか?今回のことはお前達が喧嘩を売る相手を間違えたんだ。きちんと相手を見定める目を養うんだな」




奏は近藤の前に守るようにして立ち、沖田もそれに倣った。


その姿はまさに主君を守る忠臣のごとく。


男はうなだれ、顔を下げた。




「…それにしても辛そうだな。薬をやろう。一君、石田散薬持ってたよな?」


「あぁ」


「あれを持ってきてくれ」


「分かった」




斎藤は自室に石田散薬をとりに戻った。




「はぁ、まったく。優しすぎるよ、私は。昔に比べれば大分落ち着いたと思うよ」




奏は肩を竦め、頭を振った。




「昔はどうだったんだ?」


「主や主の友人方の悪口を言った奴の所に殴り込みに行った。正当な理由があった時には…」




奏は口端を上げ




「今頃どうしているか。生まれ変わる事ができるようになっただろうか」




と遠くを見つめるように目を細くした。




『……』


(…死んだのか?死んだんだな…)




この頃、よく一致するみんなの心の台詞だ。



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