誠-巡る時、幕末の鐘-
「…それって殴り込みじゃなくて殺り…ごふっ!!」
「どうしたんですか?新八さん。そんなにお腹押さえて。もしかしてお腹痛いんですか?石田散薬いります?」
最後まで言わせることなく、肘でお腹を殴った。
痛がる永倉にも石田散薬を勧めようとする根性はさすがだ。
「い、いらねぇ!!こ、これくらい何とも…!!」
「そうですよね。新八さんは強い体をお持ちだから」
やせ我慢をする永倉の目には、うっすらと水が浮かんでいた。
いつもながら哀れな奴だ。
「私は完全に怒ったら理性が全て吹っ飛んで、危うく理性が消えるらしい」
奏は腕組みをし、そうだろうかと考え込んだ。
なにしろ理性が吹っ飛んでいるので、全く記憶にない。
「そ、そうなんですか」
響が若干顔を引きつらせながら言った。
「完全じゃなくてもやばいんじゃない?」
「沖田さん…それは私への挑発ですか?」
「ううん、違うよ?」
二人はニコニコと話しているが、周りの人間は二人が、特に奏がいつ刀を抜くか気が気じゃない。
迷惑な話だ。