誠-巡る時、幕末の鐘-



「ト、トシ…」


「俺はもう総司で慣れてる」




近藤が土方の方を困ったように見た。


しかし、土方は諦めていると言わんばかりに、一人お茶を飲んでいる。




「酷いなぁ。土方さんだって似たようなものなのに」


「おめぇと一緒にするな」


「そうでしたね。土方さんは毎日理性吹っ飛んでますからね」


「総司…てめぇ…」




いつもの土方が戻ってきた。


近くにあった竹刀に手を伸ばし、沖田の元へと飛んでいった。


悟りの境地もあっけなく崩されてしまったようだ。




「持ってきたぞ。あと酒も」


「ぎゃっ!!気配を消して後ろに立つなよ!!」


「悪かった」




いつの間にか戻ってきた斎藤が永倉の背後に立っていた。


いきなり背後で声がしたので永倉が驚きを隠せずにいる。




「酒?薬を飲みたいんですよね、あんたは」


「あぁ。早く、早くくれ!!」


「ほら。薬を飲むのに酒で飲む奴がいますか。水を持ってきて下さい」




まぁ、当然の考えだ。


薬は水かお茶で飲むものだ。


酒で飲むなど普通は聞いたことがない。


………普通は……な。



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