誠-巡る時、幕末の鐘-



「私はそういう奴も嫌いだ。お前はどうやら私が嫌いな人間の要素の見本のようなものらしい」




奏はそのまま話を続けた。




「…自分の力を見誤るな。今のお前の地位は先程の腕からして所詮親のおかげ」




鼻で笑い、中谷の方に冷たい視線を投げた。




「いつか大事の時に真っ先に命を落とすというやつだな。まぁ私には関係ないが」




響の肩から片手を離し、軽く上げた。


戻ってきた爺から、受け取り、さらさらっと書いた。




「爺、これを」


「はい」




そのまま、また道場を出て行こうとした。


しかし、中谷がそれを許さなかった。




「どうか!!お願いでございます!!」


「自分の誇りまで取り去ったか。…爺、待って。もうここいらで終わりだ」




土下座をし懇願する中谷に、奏は一瞥をやった後、爺が出て行こうとするのを止めた。




「元老院から使いが来た」




庭の方に突然誰かの気配が現れた。



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