誠-巡る時、幕末の鐘-
甘味への執着は恐ろしい
「…ようこそ」
「これはどういうことだ?」
奏は道場に入ってきた見目麗しい黒髪の青年に頭を下げた。
だが、青年は事の次第を早急に知りたいらしい。
「見ての通りです」
奏は辺りを見回してそう言った。
「院則は知っているな?」
「はい」
奏は珍しく粛々と言葉を紡いでいた。
「まったく。主であるミエもだがお前までも院則無視か。……お前の主は何をやっている?」
青年は呆れたように言い放った。
「ミエ様方はきちんとされております。…ただミエ様に少々派手な行動があるだけで」
「少々、か?」
何かを思い出すように、眉根をギュッと寄せた。
何か思い出したくない過去の記憶があるらしい。
「この男、色々と役に立たせないといけないんですが。どうしましょう?」
『やっぱりまだ許してなかったか』
この上さらにこき使うのかと、みんなは深い深い溜め息をついた。