誠-巡る時、幕末の鐘-
「ならば血判をとれ。他言無用というな」
「なるほど」
青年の言葉にポンッと手を打った。
中谷を起こし、青年から紙を受け取った。
「…さっさと書く。部下も起こせ。書くには手が必要だな」
奏は、目を覚まさせられて連れてこられた部下二人の前に立った。
そして、柏手を一回鳴らした。
すると、切られたはずの腕と足が元に戻っていた。
「なっ!!?腕と足が!!」
中谷も物凄く驚いている。
目の前で確かに切られたのだから無理もない。
「今のは幻だ。本当に切り落とすわけがないだろう?…今回はな」
「星鈴?」
言葉の最後につけ加えられた小さな声も、青年の耳にしっかりと捕えられていた。
地獄耳に違いない。
「何でもないですよ」
奏は冷ややかな視線を笑顔で飄々(ヒョウヒョウ)と言葉を返すことで乗り切った。
まるで氷山の一角に立たされたかのごとく冷たく、体に突き刺さるような視線だった。