誠-巡る時、幕末の鐘-
「今から文を書く。それを紫苑様に届けてくれ」
「いいぜ。あのお方は俺も好きだかんな」
鷹はまた面倒をふっかけられると思っていた。
だが、実際に奏の口から出てきたのは文の配達でなんのことはなかった。
………今回は。
奏はさっき中谷達に書かせた時に使った筆を使い、丁寧かつ素早く書いた。
「よし、できた。早く持っていってくれ」
「はいはい」
鷹は溜め息つきながらも、その文を届けるべく空に消えた。
こういう素直なところがこき使われる原因ではないのだろうか。
素直な奴というのはえてして利用されやすい。
気をつけた方がいいだろう。