誠-巡る時、幕末の鐘-



門の前で暇を潰していると、人影がこちらに歩いてきた。


よく見ると見知った顔だった。




「あれ?奏ちゃん。こんな所で何してるの?もしかして僕の帰りを待っててくれたの?嬉しいなぁ」


「なんでそうなる。私は別の奴を待っているだけだ」




言わずもがなの沖田だ。


何が楽しいのかいつも意味の分からん冗談を言っている。


たまに冗談では済まされないような重大事をポロッと言ってくれる。


要注意人物、堂々の第一位取得者だ。


人間が第一位をかっさらうのは何年ぶりだろうか。




「それにしても遅かったな。こんなにかかって」




沖田が男達を送り届けるために屯所を出たのが、まだ太陽が夕日に変わるより大分早く。


今はもう夕日に変わって大分経っている。




「ちょっと道草してたんだよ」




沖田がニコニコしながら言った。



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