誠-巡る時、幕末の鐘-
「……無事なんだろうな」
その笑顔の裏に満足感がありありと見えたので、何で道草したのかよーく分かった。
「無事じゃないけど、大事でもないって所かな?」
「それを向こうにどう説明した?」
「知らないよ?僕は門の手前までだし」
何とかなるでしょ、と肩を竦め、自分には関係ないと首を左右に振る。
「…ハァ。やっぱり」
大方どこかの河原で、男達に沖田なりのけりをつけてきたのだろう。
ま、いっか。
その時、上空に影が見えた。
バサバサと翼をはためかせ、鷹が降りてきた。
「奏!!行ってきたぜ。伝言だ。“今度また作るからそれは食べないで捨てなさい。体調を崩さないように”だそうだせ?」
鷹は自分の体から落ちた羽を気にしていた。
「そうか。分かった。ありがとう」
「じゃあ、俺は帰るからな」
「あぁ」
鷹は再び茜色に染まった空へ飛び立った。
「さて、中に入るか」
「そうだね。もうじき夕食の時間だし。あんまり遅いと土方さんに怒鳴られるからね」
二人は明かりのついた屯所の中に入っていった。