誠-巡る時、幕末の鐘-
楽しみは何があっても忘れない
―――大広間
「新八さん、左之さん、平助。乾杯しよう!!さっ、これ飲んで」
奏が少し濁った酒を持って、三人の前にやってきた。
「おっ、いいな〜!!濁り酒か」
「へへっ。やった!!」
「奏から誘うなんて珍しいな」
「いいな〜平助達。奏ちゃん、僕も混ぜてよ」
奏が永倉達の方へ行ったのを見て、沖田が寄ってきた。
自分がのけ者にされるのは嫌なのだ。
「駄目ですよ。乾杯〜。だってこれは…」
沖田が酒をつごうとしたのを、パッと奪った。
そして四人で乾杯をして、三人が飲んだのを確認して……
『…な、何じゃこりゃーっ!!』
………ニヤリ
飲んだフリをして、奏は一人、妖しく笑っていた。
どう考えても普通の濁り酒だけの味じゃない。
どちらかというとこれは…
「昼間、中谷に渡したのと同じのが入ってるんだから」
その言葉に三人は血の気が一気に引いていった。
この時だけは研ぎ澄まされた勘が鈍っていて欲しいと願っていたのに…。
やはり、勘は外れてはくれなかった。