誠-巡る時、幕末の鐘-
―――風戸家
「お帰り。また奏の所に行ってたの?」
風戸紫翠と鈴が屋敷に戻ってきた時、離れから若い男の声がした。
「お前か。どうせ全部見ていたんだろう?」
「だって、奏をようやく見つけたからね」
男の手には青白い炎が浮かんでいた。
その炎にどんな場所の映像も映るのだ。
「珠樹(タマキ)はどこに行ってんだ?」
「さぁ?また女装してどこかへ出かけたよ」
男…雷焔彼方(ライエン カナタ)は、現在風戸家に身を置いていた。
そして、幼い頃に養子に出された奏の双子の兄、珠樹もまた共に。
「さて。そろそろ僕も奏に会いに行こうかな。珠樹も動きだしたし」
彼方は炎を消し、着物の袖を翻し、奥に入っていった。
「珠樹の奴、女装趣味なんてあったのか?」
「さぁな。あいつら二人、何を考えているのかよく分からん」
紫翠と鈴は今度こそ母屋に入った。
これから起きることに面白さを感じながら…。