誠-巡る時、幕末の鐘-



―――風戸家




「お帰り。また奏の所に行ってたの?」




風戸紫翠と鈴が屋敷に戻ってきた時、離れから若い男の声がした。




「お前か。どうせ全部見ていたんだろう?」


「だって、奏をようやく見つけたからね」




男の手には青白い炎が浮かんでいた。


その炎にどんな場所の映像も映るのだ。




「珠樹(タマキ)はどこに行ってんだ?」


「さぁ?また女装してどこかへ出かけたよ」




男…雷焔彼方(ライエン カナタ)は、現在風戸家に身を置いていた。


そして、幼い頃に養子に出された奏の双子の兄、珠樹もまた共に。




「さて。そろそろ僕も奏に会いに行こうかな。珠樹も動きだしたし」




彼方は炎を消し、着物の袖を翻し、奥に入っていった。




「珠樹の奴、女装趣味なんてあったのか?」


「さぁな。あいつら二人、何を考えているのかよく分からん」




紫翠と鈴は今度こそ母屋に入った。


これから起きることに面白さを感じながら…。



< 345 / 972 >

この作品をシェア

pagetop