誠-巡る時、幕末の鐘-



―――鬼一族、雷焔(ライエン)家




………その日…


後に京と呼ばれる場所に里を築いた雷焔家に双子が誕生した。


雷焔家を里の長とする鬼達は、揃って祝福の言葉を述べた。


当主夫妻は、兄に珠樹(タマキ)、妹に奏(カナデ)とつけた。




「彼方(カナタ)。こちらへいらっしゃい」


「はい。母上」




奥方の穏やかな声が、双子の兄を呼んだ。




「ほら。あなたの双子の弟妹よ」


「今日から彼方は兄だ。しっかり二人を守ってくれ」




彼方は自分の弟妹の顔を眺め……




「はい」




そう答えた。



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