誠-巡る時、幕末の鐘-
―――当主夫妻の部屋
「父上、母上。珠樹と奏が見つかりました」
彼方がそう声をかけると、中が騒がしくなった。
ガラッ!!
「珠樹!!奏!!」
部屋の戸が開いたと思った瞬間、奥方が二人に抱きついてきた。
「大丈夫?私を呼んでくれればよかったのに!!」
「母上だけでは駄目ですよ。道に迷ったら困ります」
雷焔家の奥方は極度の方向音痴なのだ。
確かに屋敷は広いが、自分の家であるのにも関わらず迷えるという始末。
逆についていって、もっと大変なことになりかねない。
だから夫婦揃って屋敷の中で待機していた。