誠-巡る時、幕末の鐘-
暗雲たちこめるは親の心
―――数日後
その日は朝から騒がしかった。
雷焔家と対の鬼の一族である風戸(カザト)家で、当主が亡くなり、代替わりしたのだ。
当主が代替わりする時、もう片方に挨拶をするのが決まりになっている。
その日も通例通り、風戸の新たな当主で、先代の一人息子である紫翠(シスイ)が、側近の鈴(スズ)を伴いやってきた。
一通の書簡を持って……
『双子は鬼を滅ぼす原因になる。どちらかを当家に預けて欲しい』