誠-巡る時、幕末の鐘-
しばらくして部屋の戸が開く音がした。
「……かなで」
「あ!!たまき、おかえり!!どうだった?……たまき?」
奏は珠樹の顔色が悪いことに気が付き、両親の元へ連れて行こうとした。
「だめ!!!」
「…え?」
「ねぇ、かなで。かなでは、ぼくとずっといっしょだよね?」
「?うん!!あたりまえだよ!!だってわたしたちは、ふたりでひとりなんだから!!」
珠樹はどこか思いつめているような雰囲気を漂わせていた。
奏がそう言うと珠樹は安心したように笑ったので、奏も笑い返した。
後から思えば、この頃から珠樹の奏への異様な執着心は始まっていたのかもしれない。