誠-巡る時、幕末の鐘-
そして、星鈴が二の句を告げるよりも先に、青年が響の手を掴んだ。
「えっ!? あの、ちょっと!」
いきなり手を掴まれた響だが、当然ながらかなり狼狽えている。
「君を捕まえておかないと、そこの君はついてきてくれないだろうからね」
「チッ」
「……えっ、と」
響は困惑を隠し切れず、困り果てて星鈴に下がりきった眉を見せた。
その瞳には、申し訳なく思う気持ちがこれでもかというほど込められている。
たまらず、星鈴は思いきり深く溜息をついた。
「……やっぱりなぁ」
面倒なことになってきた。
もちろん、響のことではない。
言わずもがな、この見知らぬ青年のせいである。
ただ、一つ分かったこともある。
彼は腹黒で、おまけに計算高い。
絶対に。
(……人間版のレオン様)
最悪な奴に捕まって最悪な状況に陥る。
そんな、よくある展開。
(……ほんと、最悪だ)