誠-巡る時、幕末の鐘-



 そして、星鈴が二の句を告げるよりも先に、青年が響の手を掴んだ。



「えっ!? あの、ちょっと!」



 いきなり手を掴まれた響だが、当然ながらかなり狼狽(うろた)えている。



「君を捕まえておかないと、そこの君はついてきてくれないだろうからね」


「チッ」


「……えっ、と」



 響は困惑を隠し切れず、困り果てて星鈴に下がりきった眉を見せた。


 その瞳には、申し訳なく思う気持ちがこれでもかというほど込められている。


 たまらず、星鈴は思いきり深く溜息をついた。



「……やっぱりなぁ」



 面倒なことになってきた。


 もちろん、響のことではない。


 言わずもがな、この見知らぬ青年のせいである。


 ただ、一つ分かったこともある。


 彼は腹黒で、おまけに計算高い。


 絶対に。



(……人間版のレオン様)



 最悪な奴に捕まって最悪な状況に(おちい)る。


 そんな、よくある展開。



(……ほんと、最悪だ)


< 36 / 972 >

この作品をシェア

pagetop