誠-巡る時、幕末の鐘-
終焉は突然訪れる
―――二年後
「彼方兄様!!今日は奏と遊んでくれる?」
「いいよ。今日は天気がいいから少し遠くへ行こうか。馬を引いてくるよ」
奏は珠樹の記憶を取り戻すことなく過ごしていた。
「ほら、奏。おいで」
彼方は自分の愛馬に奏を乗せると、手綱をとり馬を進ませた。
「お日様温かいね〜」
「そうだね。……寝ててもいいよ?」
馬に揺られてウトウトしだした奏に気がつき、彼方は奏の頭を撫でた。
しばらくすると可愛い寝息が聞こえてきた。
雷焔の里は温かい春の陽気に包まれ、滅びの運命が歯車と噛み合って動き始めたことを誰も知らなかった。