誠-巡る時、幕末の鐘-



「奏。……奏」




揺り起こす手によって起きた奏は、目の前に広がる綺麗な桃色の木に目を奪われた。




「綺麗〜!!ねぇ兄様、この木なんて言うの?」


「これは桜だよ。もう満開になっていたんだな」


「桜?桜か〜。綺麗だね〜」




桜を初めて見た…と思った奏は下の花畑にも目を移した。




「お花がいっぱい!!彼方兄様!!ここは二人だけの秘密の場所にしようね!!」


「……あぁ」




奏は覚えていなかった。


ここは珠樹と見つけた花畑だと。


この桜の花はみんなに友達の印だと配った花だということを。



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