誠-巡る時、幕末の鐘-
―――数日後
奏はまた彼方と花畑に来ていた。
桜は散り始めていた。
「兄様。……桜は枯れるんじゃなくて散っちゃうんだね」
「あぁ。でも散る様の方が綺麗じゃない?」
「……そうだね!!雪みたい!!」
奏は冬に降った雪を思い出して言った。
寒いのは大の苦手だが、あの冷たくて白い雪は幼心にもとても素晴らしいものに映ったのだ。
「寄り道してきたからね。大分暗くなってきた。そろそろ戻ろうか」
「うん!!」
辺りは茜色に染まっていた。
だからなのだろうか。
奏はこの時気付かなかった。
その茜色の空に煙が立ち上っていることを。
そしてそれを無表情に眺めている兄の姿に。