誠-巡る時、幕末の鐘-
「父様ぁ!!!母様ぁ!!!」
なおも手を伸ばそうとする奏に、彼方は目を合わさせた。
「爺達を探してくるから、奏は桜の木の下で待ってて。後から行くから」
「うっ!!ひっく!!……絶対?私を置いていかない?」
「あぁ。さぁ、行って」
彼方は門まで奏を連れて行った後、背中を押し、自分は再び屋敷に戻った。
奏は兄が両親を殺したとは考えたくなかった。
だから最後まで信じたのだ、己の兄を。
これを境に奏が彼方の姿を見るのは、だいぶ先……幕末までなかった。