誠-巡る時、幕末の鐘-
「ひっく!!ひっ、く!!」
奏は桜のある花畑を目指した。
まるで誰かが自分の片手を握ってくれているような感覚を覚えながら。
その手は小さく、懐かしい感じがした。
「奏か?」
「紫翠?鈴?」
そこには兄の友である二人の姿があった。
「もう安心しろ。俺達がついててやる」
そう言い奏をおぶった鈴に奏は泣きながらしがみついた。
「もう大丈夫だ」
「桜のとこ、知ってる?」
「桜か?あぁ、知ってる」
「そこに行って。彼方兄様がそこで待っててって」
「分かった」
奏はそう言うと、鈴の背に頭を寄せ、黙ってしまった。