誠-巡る時、幕末の鐘-



「こいつらもか?」



 男の前まで連れて来られた二人に、男は一瞥(いちべつ)を向けると、青年に向かって顎で指し示した。



(こいつら()

 今、この男、そう言った?

 私が、あの、攘夷志士だかなんだか知らん連中の仲間だと?

 もしそうなら、今頃あいつら全員死んでるよ)



 確かに、もし彼らが星鈴の仲間、もとい人外であれば、最初から刀は鞘に納まってなどいなかった。


 ここまでで既に星鈴の不機嫌さは(うかが)えるものの、それだけではすまない。


 何故なら、内心、星鈴は怒り狂っていた。


 理由は様々だが。


 一番の理由は……まぁ、何はともあれ、今は虫の居所が非常によろしくない。


 否、最悪だ。



「市中で攘夷志士に(から)まれていて、騒動になってたんですよ。だから、この二人は被害者ですよ。……あれ? 加害者かな?」


(はあぁぁぁっ? 何ぬかしてんだこいつ!)


「で? 結局どっちなんだ?」


「……別に来なくても良かったようなので、帰らせてもらう。行くぞ、響」


「えっ!? あっ、はいっ!」



 刀を腰に差し直し、立ち上がろうとした時。


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