誠-巡る時、幕末の鐘-
―――早朝、屯所の一室
「…………」
「おはよう。奏ちゃん」
「何で……あんたがここにいるんですか?」
鬼の少女、雷焔奏は先日とある事件で力を使い過ぎてしまい、寝込んでいた。
人間で言う風邪のようなものだ。
寝てれば治ると、昨日も早くに床についた。
……それが間違いだった。
「だって風邪ひいてる時は人肌が恋しいでしょ?」
そんな事をニコニコと言ってくれる。
「たとえそうでも…その場合は自分から頼むんじゃないですか?沖田さん?」
「目が訴えてたから」
輝くばかりの笑顔でありもしないことを言い始めた。
治ったら目医者に連れていくべきか、と真剣に考えざるを得なかった。
何故なら今の状況は、いささかというかかなりまずい。
奏の布団に沖田が潜りこみ、まさしく添い寝状態なのだ。
昨日、しっかりと結界を張っておかなかった我が身を呪った。
「分かった。ありがとうございました。もういいです」
「えぇ〜。まだ一緒にいたいのに」
ただでさえ頭が痛いのに、もっと頭が痛くなるような事を平気で言ってくる。