誠-巡る時、幕末の鐘-



二人に心配をかけないためにも、と奏は少々焦っていた。


二人が帰ってくるのは三日後だ。


永倉達は顔を見合せ、腰を上げた。


何か言いたそうな顔をしていたが、それを口に運ぶことはしなかった。


しばらく口を開けたり閉じたりしていると、永倉が堰(セキ)を切った。




「ゆっくりしてたら治るさ!!」


「病は気からって言うだろ?」


「そうそう!!じゃあ、なんかあったら呼べよ!!」




ストンと障子が閉じられ、いつもの静寂に包まれた部屋に戻った。




「もっと頼れ、か」




奏はしばらく障子の方を見やり、沖田に言われた言葉を思い返していた。




「もし私がみんなを頼って……私らしくもない。こんなことを考えるなんて」




奏は頭を一つ振ると、温もりがある布団に横になった。


その温もりが沖田のものであることに、ほんの少しの抵抗を持ちつつ。


しかし、どこか安心できるその温もりに、一瞬笑みを浮かべて。


目が覚める前の微睡みに、体を再び委ねた。



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