誠-巡る時、幕末の鐘-
「……もしまた具合が悪くなったら言うんだぞ?」
「はぁい。……ねぇ、近藤さん。一つだけ聞いてもいいですか?」
近藤の方を見ずに、庭に目をやったまま尋ねた。
「あぁ。なんだ?私に答えられるといいんだが」
「答えられますよ。……何故そんなに私の心配をするんです?」
「は?」
近藤もこんな質問だとは思わなかったせいか、鳩が豆鉄砲をくらったようになっている。
奏は今度はきちんと近藤の方を向いた。
とても真剣な顔だ。
「どうして鬼である私を心配するんですか?人間よりも丈夫なのに」
近藤は顔を引き締め、ただ一言言った。
「奏君が私達にとって大切な仲間であり、家族だからだ」
その瞳は言葉よりも雄弁に語っていた。
「……そうですか」
奏はその瞳から逃げるように、視線を近藤からそらした。
その横顔は嬉しそうでもあり…淋しそうでもあった。
「奏お姉ちゃん!!」
屯所の門の外から、元気な子供らしい声が響いてきた。