誠-巡る時、幕末の鐘-
「……栄太か…。近藤さん、行ってきますね」
「あぁ。気分が悪くなったら「分かってますって!!」
奏は苦笑せずにはいられなかった。
まるで、近藤が自分に対して、本当の親のように接していたから。
「行ってきます!!」
「あぁ。行ってらっしゃい」
近藤は奏の頭をふわりと撫でた。
奏は一瞬動きをとめ、近藤を凝視してしまった。
そしてフニャリと笑い、背を向けて屯所の外へ歩いていった。
「トシ。そこにいるのか?」
「……あぁ」
「せっかくの粥(カユ)が台無しになったな」
土方は近藤の横にドカッと座り込んだ。
右手にはまだ出来たての粥を持っていた。
角に隠れて、話が終わるのを待っていたのだ。
「奏の奴。妙な考え起こしやがって」
「トシが一番心配性だからな」
「う、うるせぇ…」
さすがの土方も近藤には適わないらしい。
顔を少し赤くして、横を向いてしまった。
それを見て、近藤は口を開けて笑った。