誠-巡る時、幕末の鐘-
「ほら。ちゃんと自分の力で歩いてよ」
「なら、その手を離せ!!」
奏は沖田の手を振り払おうとブンブン振った。
だが、振り払われるどころか逆にきつく握られる。
「ちょっ!!痛い」
「ごめんね。でもこうしないと、さっきみたいに逃げるでしょ?」
「俺達の顔を見た瞬間、路地裏に入り込むとは」
やはり気付かれていた。
まぁ、この二人なら気付くだろう。
「だって見つかったら…こうなるくらい想像できたから、さ」
「ならば、何故大人しく屯所で寝ていない?」
斎藤の、静かだがわずかに咎(トガ)める響きを持つ言葉に、奏は黙りこむしかなかった。
ようやく大人しくなった奏に、沖田も腕を掴む手を緩めた。
「もう大丈夫だっていうのをどうやって証明すればいい?」
奏は途方に暮れたような顔をしていた。
だが、それも一瞬で掻き消えた。