誠-巡る時、幕末の鐘-
「とにかくまずは手を離して!!」
「あの…」
横で誰かの声がしたと同時に、勢いよく沖田の手を振り払った。
力を緩めていたせいか、今度は簡単に振り払えた。
しかし、勢いづいた手はそのまま…。
「きゃっ」
声をかけてきた少女にぶつかってしまった。
「ごめんなさい!!お怪我はありませんか!?」
「いえ。驚いただけですから」
そう言って少女はニコリと笑った。
淡い紫の着物を着た、感じのいい少女だ。
「そうですか。よかった」
「何か言いかけていたが、何か用か?」
斎藤が少女に尋ねた。
「はい。道をお聞きしたいんですが」
聞いてみると、屯所の近くのお店だった。
「ちょうど戻るところなんで一緒に行きましょう」
「いいんですか?」
「はい!!」
さっきまではまだ帰らないと豪語していたのに、鮮やかな転身だ。
沖田と斎藤は肩を竦めた。
奏は女・子供には甘いのだ。