誠-巡る時、幕末の鐘-
道すがら色々と話した。
少女の名前は珠樹というらしい。
どこか何故か懐かしいような悲しいような気がするが、奏はそれを無理矢理心の奥に押し込んだ。
「それにしても、本当に奏ちゃんと似てるよね?」
「あぁ。響も従姉妹だから似ているが、ここまで他人で似るのは見たことがない」
沖田と斎藤の言葉に、珠樹は口元を押さえて上品に笑った。
それがまったく自然な仕草だから、いいとこのお嬢さんなんだろう。
「私に似ているなんて…奏さんに失礼です。男の方なのに」
「そうですよ!!珠樹さんはとても綺麗な人なのに失礼です!!」
奏も珠樹もズレている。
沖田は溜め息をつき、斎藤も呆れたような顔をしている。
まず、珠樹のズレは奏が女であるということだ。
そして、奏のズレは自分の顔の良さに気付いていないということだ。
珠樹は仕方ない。
事情を知らないから。
だが、奏…あんたは違うだろ、と言いたいのを何とかこらえた。