誠-巡る時、幕末の鐘-



(言えない理由があるのか?)




「……名乗らないなら帰る」




もう一度腰をあげようとした時……。




「…くっ!! 悪かったな。俺は土方歳三。こいつは沖田総司だ」




男が自分の分まで紹介すると、青年はにっこりと微笑んだ。


表面上は。




「どうも。……珍しいですね。土方さんから明かすなんて。いいんですか? 長人の間者かもしれないのに」




こうして聞いていると、二人の仲はいいのか悪いのか分からない。


今も青年の言葉は若干皮肉げな言い方だ。




「あ、初めまして」




響はご丁寧に手をそろえて挨拶をした。


深々と頭まで下げている。


男達もこれには驚いた。


まさかここまで丁寧に挨拶されるとは思っていなかったらしい。



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