誠-巡る時、幕末の鐘-



―――屯所




「奏〜!!心配してたんだぞ!?」


「……あんたらもか」




入り口の所に、永倉、原田、藤堂が立っていた。


こちらに気付くと我先にと走ってくる。




「おっまえ、どこ行ってたんだよ!?」


「俺達、随分探したんだぜ?」


「あぁ。部屋にいないと分かってどれだけ走り回ったか」




三人共大層ご立腹だ。




「近藤さんに言って行ったよ?」


『……………は?』




三人は顔を見合わせた。


その顔には、そっちか!!という言葉がありありと出ていた。




「土方さんに言ったら、出してくれないって分かってるからね」


「……分かってるなら出るなよなぁ」




藤堂が不満そうに口を尖らせた。


土方は鬼の副長と恐れられながらも、一番の心配性なのだ。




「ほら、中に入ろう。空模様が怪しくなってきた」




奏の言うとおり、空には暗雲が立ちこめていた。


雨が降る前の独特な匂いもしてきている。


濡れる前にみんな屯所の中に入った。



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