誠-巡る時、幕末の鐘-
慣れないことはするもんじゃない
―――大広間
『………』
奏は思わず目の前にあるものから目を背けた。
近藤や山南は引きつり笑い、土方は眉を潜め、斎藤は無言。
沖田は見もしない。
井上や松原は雨で巡察ができなくなる前にと慌てて出ていった。
「ちーっとばっかし失敗しちまったけどよ」
「食えないってわけじゃないと思うぜ?」
「あぁ……たぶん」
今日は響がいないため、永倉、原田、藤堂が作ったらしい。
目の前には今日の夕食…らしきものがある。
おそらく、奏を探しているうちに土方辺りに任命されたのであろう。
「新八さん。何?これ」
沖田がおぞましいものを指差すような感じで指差した。
今日の夕食は、粥に野菜の入った吸い物、真っ黒焦げの焼き魚、ほうれん草のおひたし、大根と人参のなますだった。
焼き魚以外はまぁ普通だ。
粥というところが怪しいのだ。
最初から粥を作るつもりだったのか、はたまた粥になったのかで他の料理の出来が分かる。
誰も箸に手を出そうとしない。
先程沖田が指差したのは粥だ。
誰もが永倉の答えに息を飲んだ。