誠-巡る時、幕末の鐘-
―――奏の自室
「斎藤、布団を敷いてくれ」
「はい」
斎藤は部屋の隅にあった布団を手早く敷き、土方がその上に奏を寝かせた。
「ったく!!だから寝とけって言っただろうが」
「……すいません」
奏も素直に謝った。
いつもは絶対に謝らないが、今は心配してくれていることがよく分かるからだ。
「栄太と遊びに行くのもいいが、きちんと治してからにしろ」
斎藤も土方の横に正座して、奏に静かに諭した。
「は〜い。もう大丈夫だから、二人とも広間に戻ってよ」
眠くなったのか、目がトロンとなってきた。
だんだん目が閉ざされ、仕舞いには微かに寝息を立てて眠ってしまった。
「寝ちまったか」
「はい。戻りましょうか」
「そうだな」
土方と斎藤は、奏を起こさないように部屋を出て、広間に戻っていった。
…二人が出ていった後、奏の部屋の障子に人影が映った。
その人影は中に入ると奏の頭を撫で、枕元に何か置くと、そのまま部屋から出て消えた。
奏は気付くことはなかった。