誠-巡る時、幕末の鐘-
―――市中
「別に二人もついて来なくても」
「いいじゃない。少なくて困ることはあっても、多くて困ることはないんだから」
「総司の言うことに一理ある」
三人は奏を真ん中に挟んで、魚を見ていた。
梅雨の季節だが、珍しく色々な魚が並んでいた。
「これなんかどう?」
「うーん。いや、こっちのはどうだ?」
「おじさーん!!鯛下さい、鯛」
「何匹やろか?」
二人が色々言っている間に、こちらは勝手に話を進めていた。
「何匹いる?人数分でいいか」
「人数分って……結構いるよ?」
「えっと……」
奏は隊士の数を指折り数え始めた。
見兼ねた斎藤が代わりに店主に数を言った。
「まだ買い物があるんで帰りに寄ります。半刻ぐらい後でいいですか?」
「えぇ。お待ちしとります」
店主は上客が来たとニコニコだ。
手もニギニギしている。
「じゃあ行きましょう。次は八百屋です」
「あ、うん」
「では店主頼んだぞ」
「はい。おおきに」
一つ向こうの通りにある八百屋に三人は向かった。