誠-巡る時、幕末の鐘-
「じゃがいもと人参ください」
「これだけ」
奏が種類しか言わなかったので、沖田が補足した。
「へ、へぇ。まいどおおきに!!」
店主は最初こそ驚いていたが、持ち前の商売人の顔になった。
こちらもやはりニコニコだ。
野菜は全部持って歩くことにした。
魚は持ち歩くと、いささか生臭い。
「奏ちゃん、後どこ行くの?」
「えっと後はお米が無くなってたから、米屋に「奏さん」
後ろから、声をかけられた。
といっても、気付いていたから驚きはしなかった。
「珠樹さん!!」
「偶然ですね。夕飯の買い出し?」
「はい。今日は私が作るので」
「そう。それはいいわね」
「いえいえ。そんないいものは作れませんけどね。それより雨、強くなってきましたね」
そう言って奏が上を向いた瞬間、珠樹は鋭い視線を沖田と斎藤にぶつけた。
二人はそれに気付いたが、奏の手前、何も言わなかった。
だが、その視線には明らかな敵意と微かな殺意がこめられていた。