誠-巡る時、幕末の鐘-
「なら急いで買い物を済ませた方がいいわ。まだ体調は万全じゃないんでしょう?」
「もう大丈夫ですよ」
珠樹が心配そうに眉根を寄せたので、心配ないと笑って見せた。
「ならいいんだけど。みなさんとお食事楽しんでね」
「はい。じゃあ、また」
三人と珠樹は反対方向に歩き出した。
少し離れた時、沖田と斎藤が首だけ後ろに回した。
すると、同じように珠樹もこちらを見ていた。
二人が見ているのに気付くと、口を動かした。
それを読み取ると、二人共顔をしかめた。
珠樹はニコリと笑うと通りの角に消えた。
「一君。奏ちゃん、体調崩したこと言ってないよね?」
「あぁ」
珠樹はこう言った。
<最後の夕食を…ね>
奏はもう随分と前に行っている。
珠樹が言った意味をまだよく掴めないながらも、まずは屯所に戻るまでと、奏の背を追いかけた。