誠-巡る時、幕末の鐘-



―――屯所




「ただいま戻りました」


「奏、またこの雨の中外に出たのか!?」


「おいおい。お前達二人ついて何やってんだよ」




永倉と原田が部屋の中から顔を出した。


永倉は顔をしかめ、原田は呆れている。




「土方さんに許可はもらってあるよ」


「今日は奏ちゃんがご飯作ってくれるんだって」


『なに!?』




二人共、体を乗り出した。


さっきまでの表情はどこへやら、すっかり驚愕に変わっている。




「本当なのか!?」


「うん。そうだよ」


「僕が何で嘘つくの」


「総司、それよりも」


「うん、分かってるよ。奏ちゃん、僕達土方さんに用があるから」




沖田と斎藤は永倉と原田に材料を押しつけ、土方の部屋へと行った。




「おおっ!!鯛じゃねぇか!!」


「こっちは米に野菜だな」


「二人共、それを台所まで運んで」


『了解!!』




二人は軽々と持ち、台所へ足取り軽やかに運んだ。


何か物足りない気がした奏は、藤堂がいないことに気付いた。



< 412 / 972 >

この作品をシェア

pagetop