誠-巡る時、幕末の鐘-
―――屯所
「ただいま戻りました」
「奏、またこの雨の中外に出たのか!?」
「おいおい。お前達二人ついて何やってんだよ」
永倉と原田が部屋の中から顔を出した。
永倉は顔をしかめ、原田は呆れている。
「土方さんに許可はもらってあるよ」
「今日は奏ちゃんがご飯作ってくれるんだって」
『なに!?』
二人共、体を乗り出した。
さっきまでの表情はどこへやら、すっかり驚愕に変わっている。
「本当なのか!?」
「うん。そうだよ」
「僕が何で嘘つくの」
「総司、それよりも」
「うん、分かってるよ。奏ちゃん、僕達土方さんに用があるから」
沖田と斎藤は永倉と原田に材料を押しつけ、土方の部屋へと行った。
「おおっ!!鯛じゃねぇか!!」
「こっちは米に野菜だな」
「二人共、それを台所まで運んで」
『了解!!』
二人は軽々と持ち、台所へ足取り軽やかに運んだ。
何か物足りない気がした奏は、藤堂がいないことに気付いた。