誠-巡る時、幕末の鐘-
「平助はどこ?」
「平助なら道場で隊士達を鍛えてくるって言ってたぜ」
「ふ〜ん」
奏は二人の後ろで包丁を磨ぎだした。
「奏、俺達は何すればいい?」
「手伝うぜ!!」
二人が後ろを振り向くと、奏が包丁を持ってニコリと笑っていた。
目がキラリと輝く。
「何も。運んでくれてありがとう。ここから先は女の領域だから」
「そ、そうか」
「大丈夫なのか?こんな大人数の食事を一人で」
「当たり前。響は毎日作ってくれてたんだから」
確かに響はここに来てから三ヶ月程毎日作っている。
そう考えると響のありがたさが身に染みる。
「さぁさ、出た出た。楽しみにしてて」
「お、おい!!」
「ちょっ、押すなって!!」
二人を外に押し出し、台所の扉を勢いよく閉める。
二人は肩を竦め、部屋に戻っていった。
奏は鼻歌混じりに米を洗い始めた。