誠-巡る時、幕末の鐘-
「奏ちゃん、本当に料理出来たんだね」
「当たり前でしょ。ミエ様が本家におられない時は、紫苑様の代わりに私がミエ様に食事をお作りしてたんだから」
奏が仕えているローゼンクロイツ・天宮には、名料理人がいる。
それがミエの兄である紫苑だ。
奏の料理はその紫苑から学んだものなので、美味しくできて当たり前なのだ。
逆にまずいと言われる方が、今まで主にそんなものを出していたのかと思ってしまう。
「へぇ〜。その人、お菓子も上手だよね」
「うん。この間の代わりにと先日届けて下さったやつは美味しかった」
奏は先日のある事件の後を思い出して言った。
「まぁ、響の料理の方が私のより美味しいけど」
「どっちも美味しいぞ?」
近藤が奏の頭をポンポンと優しく叩いた。
その瞳には温かいものを滲ませている。