誠-巡る時、幕末の鐘-
「見ろこの傷を!!この腹はなぁ、鉄の味を知ってるんだぜ!?」
「左之さん、それもう聞き飽きたよ。何か他の口上考えたら?」
沖田が酒を煽(アオ)りながら原田に言った。
こちらもすでに顔がほんのり赤くなっている。
「近所迷惑だ。少し声を下げろ」
斎藤は全く変わっていないにも関わらず、結構な量を飲んでいる。
「一君、相変わらず酒強いよね」
「自分の限界内で飲んでいるだけだ」
「自分の限界を知るって大事だよね」
沖田はチラリと土方を見た。
「何だ?総司」
「いいえ、何も?」
土方は明らかに酔っている。
顔が真っ赤だ。
土方は下戸(ゲコ)だから、酒はあまり飲めないのに大量に飲む。
沖田はそれを揶揄(ヤユ)したのだ。
もうすっかり食事は食べてしまい、宴会の席になっている。