誠-巡る時、幕末の鐘-



奏がお風呂から戻ると、何故か沖田と斎藤が奏の部屋の前の縁側で酒を飲んでいた。




「何でここで飲んでるの?」


「まぁまぁ。奏ちゃんも座って飲みなよ」




奏は有無を言わされず、沖田に手を引っ張られて座らされた。




「ほら、飲め」


「あ、うん」




奏も酒は嫌いじゃないので、風呂上がりの一杯と、杯を煽った。




「何か二人共、今日変じゃない?土方さんも変だったし」




奏が怪しむように二人を見た。


真ん中に座らされているので、頭を交互に振る。




「そう?いつも通りだと思うけど」


「あぁ」


「土方さんだって奏ちゃんがあんなに美味しいの作れるなんて思ってなくて、それに驚いてたんじゃない?」


「そうか?」




奏はもう一杯つぎ、一息に飲み干した。




「……雨、やまないな」


「うん。明日も雨かもね」


「明日も巡察に行けないとなると厄介だな」




斎藤が雨雲を見上げて言った。


雲はずっと広がっていて、晴れる気配がない。



< 422 / 972 >

この作品をシェア

pagetop