誠-巡る時、幕末の鐘-
「……あ」
奏が思い出したように呟いた。
「どうしたの?」
「今日朝起きたら枕元に薬が置いてあったんだ。土方さんからかな?」
もしかして一君のだった?、と袖からその薬を出して斎藤に見せた。
斎藤は沖田に目配せをした。
「奏、飲んだか?」
「いや、人間に効くのを飲んでもなと思って……あれ?」
奏もおかしさに気付いた。
土方は奏が人間でないことを知っているので、薬を渡すことなどないのだ。
斎藤も違う。
ならば……誰だと。
「奏ちゃん、それ土方さんに聞いておくからちょうだい。もしかしたら隊士の誰かかもしれないし」
「あ、あぁ」
もう一度薬を見つめ、沖田に渡した。
「じゃあ、もう寝ようかな?」
「奏もゆっくり寝た方がいい」
「うん。お休み」
奏は部屋の中に入り、パタンと障子を閉めた。
二人は奏の部屋を揃って後にした。
そして、行き着く先は同じ部屋だ。