誠-巡る時、幕末の鐘-
「土方さん、酔っ払ってる場合じゃないですよ」
「奏の部屋に朝こんな物があったそうです」
二人は水を飲ませ、酔いを覚まさせた土方に、その薬を渡した。
「これは……毒か?」
「分かりません」
三人はある一つの考えが浮かんでいた。
それは珠樹が奏を殺そうとしているかもしれないということだ。
これが毒ならばその考えは正しいことになる。
「くそ!!山崎を偵察に行かせちまった」
土方は苛立って、文机を拳で叩いた。
この屯所の中で薬草や薬に詳しいのは、山崎と奏なのだ。
今は奏が対象なので外すと、山崎しかいない。
「どうします?敵が来たら」
「最後の夕食ってことは明日来る可能性が高い」
「はい」
「みんなを今すぐ広間に集めろ。まだ寝てねぇだろ」
障子を開けて、周りの灯りを確認した。
二つ以外はまだついている。
藤堂と奏の部屋だ。
二人はすぐさま立ち上がり、起こしに行った。
土方もより眉にシワを寄せ、薬を持って部屋を出た。
土方達にとって長い一日が始まる予感がした。