誠-巡る時、幕末の鐘-
己が半身の記憶
「かなで、ぼくたちずうっといっしょだよね?」
「うん!!わたしたちはふたりでひとつだもの!!」
『だってぼくたち(わたしたち)、ふたごのはんしんだから!!』
奏は夢を見ていた。
夢ということは分かる。
幼い頃の自分がいる。
周りの花畑にも見覚えがある。
だが、一緒にいる男の子には覚えがないのだ。
「あなたは誰?どうして、私と双子と言っているの?」
二人に手を伸ばそうとした瞬間、目が覚めた。
伸ばした手は天井に向かって上げられている。
その手を下ろし、握ったり開いたりしてみた。
ツウッと何かが頬を流れた。
「……涙?何で?」
奏は泣いていた。
自分でも気付かぬうちに。
奏の心の奥で、何かが外れかけていた。