誠-巡る時、幕末の鐘-
「そういえば昨日土方さんが言ってたね。二人共二日酔いにならなかったんだ」
奏はほんの少し目を見開いて、腕を組んだ。
「あぁ!!あれくらいの酒でへばってたまるか!!なぁ、左之?」
「あぁ!!酒は飲んでも飲まれるなって言うだろ?」
奏は思わず半眼になった。
その酒にいつも苦しめられているのはどこの誰だったか。
「平助もピンピンしてたしな。妙なことがあるんだな」
しみじみと言う奏に、二人は苦笑を噛み殺した。
理由は簡単。
沖田や斎藤に叩き起こされた上に、土方によって酔い覚ましの水を大量に飲まされたのだ。
一気に目も酔いも覚めるといったものだ。
隊士達は、自分達は知らないことなので、薄く笑うにとどめた。
「おぉ。みんな元気にしてたか?」
どうやら雑鬼の群れに遭遇したらしい。
何もないところに奏がいきなり話しかけ始めた。
「じゃあ、みんな後でね」
奏は手を振って、何かを抱え、向こうへ行ってしまった。